ある日、テレビで「ベビーカーを使って交通機関を利用するお母さんについてどう思う?」という内容の番組が放送されていた。
ちょうど乳児を持つ母であるわたしは、その番組が気になって仕方なかった。
ベビーカーは邪魔だ! 正直、邪魔ですね。
というどこかの掲示板のマナー版に書いてありそうなことばかり言われていたけど、番組に出ていたタレント? が、子供を片手に抱いて、もう片方の手でベビーカーを持つことがどれほど大変なのかをそれまでベビーカーを非難していた人たちに体験してもらって「本当に辛いですねこれ」と言ってもらえたのが唯一の救いだった。
いちにちに15回から20回のおむつ交換と1.5時間から3時間に一度の授乳と1回の沐浴で腰が立たなくなり、腕が腱鞘炎になったわたしは、外出するのがとても億劫になった。乳児だけ家において出かけるわけにはいかないからだ。
しかし、お宮参りに行く前日に、どうしても外出しなくてはならない用事が出来たのだ。スーツを着てお宮参りに行くつもりだったが、里帰り先にはスニーカーしか持って行かなかったのだ。
近所のスーパーに、靴を買うために仕方なく、抱っこ紐に娘を入れて片手でベビーカーを持って行った。行き着いたスーパーには、赤ちゃんルームたるものがあって、そこでオムツをかえたり授乳したりすることが出来るようになっていて、非常に感心した。
だが、事は買い物の帰りに起こった。のどが渇いてフードコートに立ち寄り、コーラをぐびぐび飲んだのだが、そのときに生後1ヶ月の娘がギャン泣きしはじめたのだ。近くにいた初老の女性がこちらをキッと睨みつけて来たのだ。まるで赤ちゃんが泣くのは親であるわたしのモラルがなっていないからとばかりに。
子育て経験のある方にはお分かりいただけるかと思うのだけど、生後間もない赤ちゃんを大人の意思でコントロールするのは不可能なのだ。大人のルールに従って生きることが出来るようになるのはいったいいつからなのだろうか。
睨みたくなる気持ちも、百歩譲って理解できなくもないのだが、乳児を持つ親であるこちらからしてみたら、大人のマナーが理解できる年になるまで、子供を外に連れ歩いてはいけないのなら、いったい子供はどこでマナーを覚えるのだと言いたくなった。
周りにあれこれいわれるのは耳にいたいことなのだが、外を出歩いて失敗しては覚えていくことなのではないだろうか。