子供のために生きる

夫は問屋さんで働いている。
だから毎日、朝5時に家を出て夕方20時に帰って来る。

もうすぐ生後3ヶ月目に入る娘は、夫が帰って来る時間は、たいていたそがれ泣きでおおぐずりしている。

わたしがお風呂に入るのは、家族全員の入浴が終わってからだ。
娘の沐浴は夫が帰って来る直前にすましている。
わたしが入浴する時間だけ、娘を夫に預けているのだけど、

家に帰ってテレビでジャイアンツの番組を観てくつろぎたいと思っている夫にとって、死ぬんじゃないかと言う勢いで泣いている娘は、
かわいい反面、困ったものなのかもしれない。
ある日、
「虐待しそうだ」
と、困った表情で言う夫に、妻のハナはひどく困惑した。
ハナは、娘が勢いよく泣いていると、
周りの人が迷惑に思うんじゃないかと思って、
必死に抱いてなだめてなんとかやってきた。
虐待しそうだと思ったことはこれまでいちどもなかった。

ただ、周りからの苦情を恐れて、
「うるさいよ」「みんなが眠れなくなるよ」
と言葉もわからない娘に言ってしまった事がある。
一緒にいるママが神経質になっていると、赤ちゃんにそれは伝わるようで、
そういうときにかぎって子供はいつまでも泣き止まなかった。

『ああ、この子はただたんにママに甘えたいだけなんだ』
そうさとってから、彼女がギャン泣きしても、抱いてあやせばすぐに泣き止むようになった。
と、同時に、こんな自分でもこの子はこんなにも必要としてくれているのだ
と、嬉しく思いさえしたのだ。

なんで、夫はそんな風に感じてしまうんだろう。
そう思うと少し悲しくなった。